宇宙ステーションでの生活に新しいビジネスを産むヒントは? ふくい宇宙アイデアソン

JAXA新事業促進部 事業推進課 原田正行氏
JAXA新事業促進部 事業推進課 原田正行氏
私は JAXAで20年以上にわたり国際宇宙 ステーション(ISS)の日本実験棟「きぼう」や補 給機「こうのとり」の設計、開発に携わってきました。今は ISSのことをよく知る立場から、ビ ジネスとして宇宙産業へ進出したい方への講演などをしています。私からは ISS や宇宙の現状を紹介しますので、アイデアソンのヒントになればいいなと思います。 ISS は、地上から400kmの地球周回軌道 にあり、15 カ国の国際協力プロジェクトとして、常時6人の宇宙飛行士 が滞在し、無重力を利用した実験や、技術開発などをしています。 ISSの船内は地上と同じ服装で快適に生活できるように気圧や温度 が調整されています。しかし閉鎖空間であり、水が貴重で洗濯はできま せん。そのため使い切りシャツは少しでも長く着られるよう防菌防臭とし て、運ぶ量を減らしました。この臭わない下着は大きなビジネスになり、 消臭下着というカテゴリーが一般化しました。 食事では宇宙日本食があります。宇宙食には栄養面や衛生面、長期保 存など厳しい条件が求められます。これまでは米国またはロシア製が多 かったですが、新しい宇宙食が求められるようになり、羊かんやインスタン トラーメン、サバの缶詰などの宇宙食も作られました。こうした食品は JAXAが認証し、差別化できる商品としてビジネスになっています。 宇宙飛行士若田光一さんの宇宙での生活を見てみると、宇宙食は無重 カの中で置くことができず、体に貼り付けて運んでいます。ISS内の調理 器具はお湯のディスペンサーとフードウォーマーの二つしかなく、食べる時 にはスプーンとフォークを使います。サバの缶詰は飛び散らないようにと ろみが付けてあります。 宇宙飛行士は毎週土曜に掃除をしなければなりません。無重力では床 に埃がたまらず、空調のフィルターにたまります。これを掃除するのです が、掃除機のモーターが動くと(掃除機本体がくるくると)回転してしまう。 こういうことも何とかしないといけない。ハンドルやスイッチなどの拭き取 り掃除もあります。 さらに宇宙飛行士は地球に戻っても生活が続けられるよう、1日2時 間、トレーニングをしなければなりません。宇宙医学の研究では骨は地上 の10倍、筋肉は2倍の速さで減少すると言われています。また、宇宙放 射線は地上の半年分を一日で被爆します。その他にも閉鎖的な空間に国 や文化の違う6人が暮らしているので、さまざまなストレスや健康への影響があるようです。 これらは困りごとや課題のほんの一部です。ISS での生活を紹介したい ろんな動画もあるので、そちらもヒントになると思います。様々な情報を収 集してアイデアソンに取り組んでください。