宇宙飛行士・古川聡さんが語る宇宙ステーション 福井で講演

質問者の男の子と笑顔で握手を交わす古川聡さん=6月16日、福井県福井市のアオッサ
質問者の男の子と笑顔で握手を交わす古川聡さん=6月16日、福井県福井市のアオッサ

航空宇宙の国際会議「第32回宇宙技術および科学の国際シンポジウム(ISTS)福井大会」が6月15~21日、福井県福井市で開かれた。月の探査計画、ロケット、人工衛星など宇宙にまつわる学術会議のほか、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の宇宙飛行士古川聡(さとし)さん(55)の講演、県内学生の宇宙に関する研究発表など一般向けの多彩な催しが繰り広げられた。超小型人工衛星「県民衛星」の開発をはじめ、県や県内企業が宇宙分野の取り組みに力を入れる中、県民が広く宇宙への興味を深める機会となった。

「2020年代に月に着陸し、30~40年代には火星に到達する計画です」。福井市のアオッサ県民ホールで講演した古川さんは、JAXAなど世界各国の宇宙機関が目指す月や火星の有人探査計画を紹介した。「火星に降り立つ最初の日本人は、今いる子どもたちの中から出てくるでしょう」と語りかけると、会場の小学生たちは目を輝かせて宇宙で生活する未来を思い描いた。

医師でもある古川さんは、2011年6月~11月に国際宇宙ステーション(ISS)に滞在し、医学実験やISSの維持管理に従事。14年にはJAXAの宇宙医学生物学研究グループ長に就任した。

講演で古川さんは、ISSに物資を運ぶJAXAの無人補給機「こうのとり」の活動を例に、日本の技術が宇宙開発で重要な役割を果たしていると強調した。

ISSに到着したこうのとりはロボットアームでキャッチされるが、古川さんはその大変さを「新幹線に乗っている人が、並んで走る新幹線に乗っている人と握手をするような難しさ」と説明。「(それぞれの新幹線の)速度がぴったり合っていないと握手できません。ISSとこうのとりは1秒間に8キロの速さで飛んでいて、衝突の危険がありますが、技術でコントロールしています」と話した。

会場には約500人が詰めかけ、古川さんへの質問も相次いだ。「一般の人が宇宙旅行に行けるようになる時期は?」の問いに古川さんは「あと15~20年くらいでしょう」と回答。飛行機も昔は経済的に余裕のある人しか乗れなかったが、今では多くの人が利用できるようになったと話し、次第に宇宙に行く費用は安くなっていくと予測した。

「壁にぶつかったときの乗り越え方は?」との質問には「自分が今やっていることは、何のためなのかという原点に戻るよう心掛けています」と答え、ロシア語の習得や雪の中でのサバイバルなど大変だった訓練を振り返った。「宇宙で感動した経験は?」と尋ねられると、「窓から見た地球の美しさですね。地球が一つの生き物のように見えました」と語った。

古川さんに質問した福井市の小学5年生の女児は「宇宙は真っ暗で怖いイメージがあったけど、話を聞いて行ってみたくなった」と笑顔を見せた。チアダンスを習っているといい「宇宙で踊ったらどうなるんだろう」と想像を膨らませていた。