ふくい宇宙アイデアソン 「食」の部プレゼンテーション内容

「V1」チーム

■3位 「V1」 好きな体勢で寝られる服

「V1」チーム
「V1」チーム

宇宙でのストレス増大の原因の一つに、睡眠の質の低下がある点に着目した。寝袋を使って体を固定していた従来の就寝スタイルを改善できる服を目指した。

たどり着いたのは、浮遊せず、好きな体勢で寝られるよう微細な吸盤をトップスとボトムスそれぞれに取り付けるアイデアだ。生地は、保湿性があって肌触りの良い羽二重織物と、丈夫なポリエステルを使用することで、心地よさと耐久性を両立。恐竜、カニといった福井県の特色をモチーフにしたデザインとした。

ただ、寝返りをうったときに吸盤が取れてしまう心配があった。吸盤の耐久性を調べ、服の部位によって吸着力が異なる吸盤を付けるよう工夫した。腕やふくらはぎなどよく動かす場所には吸着力が低い吸盤を、背中などあまり動かさないと考えられる場所は吸着力が高い吸盤にすることにした。

メンバーは「力を合わせて考えたことが評価されてうれしい」と声を弾ませた。

「福井文化服装学院」チーム
「福井文化服装学院」チーム

■「福井文化服装学院」 宇宙生活、洋服で豊かに

「ファッションを通じて、宇宙での生活を豊かにしたい」。そんな思いから、閉鎖空間であるISS内でのストレスを軽減し、気分を高められる男女の服を形にした。

生地は抗菌、消臭効果がある天然竹繊維を使用。上着の脇などにあるひだはオーロラ色に反射する反射材を使い、華やかさを演出している。いずれも県内企業の素材だ。

生地の無駄を抑えるため、長方形に裁断した生地をつなぎ合わせる着物の作り方を採用した。これは洗濯ができないISS内で清潔さを保つ工夫でもあり、汚れた部分のみを簡単に取り換えられる。

「まるぱん」チーム
「まるぱん」チーム

■「まるぱん」 水で復元できる圧縮下着

宇宙でも自分らしくおしゃれに―。水で復元できる圧縮した下着「コンパクトインナー」を提案した。下着の体積を小さくすることで宇宙飛行士が持ち込む荷物に余裕ができ、好きなTシャツやズボンなどの衣類を持ち込めるようにするアイデアだ。

下着の代わりに圧縮したタオルで実験したところ、圧縮袋に入れたタオルと比べて体積が4分の1になった。下着の素材についても検証し、肌触りが良く吸水性の高いコットンリネンが最適と結論づけた。下着の製造には、福井の繊維技術を生かせることも強調した。

ふくい宇宙アイデアソン 「食」の部プレゼンテーション内容

「しー おぶ くらうず」
「しー おぶ くらうず」
「しー おぶ くらうず」

■2位「しー おぶ くらうず」 いちほまれとそばコラボ

各国の宇宙飛行士に古里の味を思い出してもらうため、世界の調味料と合わせて食べられる「1soba(いちそば)」を提案。2人は「息抜きである食事を楽しんでほしい」とアピールした。

「誰の口にも合うよう、宇宙食は画一的な味が多い」と細川さん。宇宙飛行士のブログなども参考に「食の改善」をテーマに取り組んだ。

いちそばは、いちほまれで作った米粉とそば粉を混ぜ、飛び散らないよう一口大の塊に加工する。つけだれはハラペーニョやナツメグなど各種調味料を使い、80度のお湯で溶けるカプセルに詰める。

数種類の調味料を合わせることも可能。実際に、日本のみそとイタリアのバルサミコ酢を合わせると、「酸味とこくが生まれリッチな味になった」。宇宙食だけでなく、非常食としても活用できる。

宇宙飛行士になりきった対話形式のプレゼンも高評価だった。「実用化されたら日本食や福井を知るきっかけにしてほしい」と口をそろえた。

「FUT古澤研究室」
「FUT古澤研究室」

■ 「FUT古澤研究室」 健康支えるふりかけ 味多彩

国際宇宙ステーション(ISS)内での長期滞在は、生活リズムと体内時計のずれ、ストレス増大、骨密度の低下などの健康問題を生む。1日の生活をスタートさせる朝食で、栄養価の高いふりかけを食べることで課題を解決できないか模索した。

米が詰め込まれた容器の口に、ふりかけが入ったキャップを取り付け、容器内を高圧状態にすることで米にふりかかるようにした。原料には県産トマトやほうれんそうなどを使用。パスタやパンに合うふりかけも考えた。「多彩な味を用意し、飽きないことも利点だ」と説明した。

「熱血バレーボーラーズ」
「熱血バレーボーラーズ」

■「熱血バレーボーラーズ」 「水ボトル」を活用したみそ汁

ペットボトルの削減に向けて海外の学生が開発した球状の水ボトルを活用し、日本人になじみ深いみそ汁を宇宙で味わえるようにした。宇宙でごみを出さずに栄養補給ができる利点をアピールした。

この水ボトルは、海藻の成分を含んだ膜で水を包み込む構造で、膜自体も食べられるため環境に優しい。みそと具材もそれぞれ膜で包み、膜を破ることでみそ、具材、水が混ざってみそ汁が出来上がる仕組みにした。具は福井の特産の油揚げなどを入れる。

実験では、膜を厚くすれば冷凍にも対応できることを確認した。

「特許未取得チーム」
「特許未取得チーム」

■「特許未取得チーム」 福井の特産 キューブ状に加工

越のルビー、六条大麦など福井の特産品を角砂糖のような小さい立方体の形に加工した食品を考えた。栄養価を高めるため、ヨーグルトをかけて食べる。立方体に加工した食品は、さまざまな種類があり、組み合わせ次第で好みの味を楽しめるようにした。

ヨーグルトを使用する上での課題は保存期間が短い点だった。解決に向け、ペンライトの構造を模した容器を考えた。中にはミルクと乳酸菌が分かれて入っており、ペンライト状の容器を折ることでそれぞれが混ざる仕組み。食べる直前にヨーグルトが出来上がるよう工夫した。

ふくい宇宙アイデアソン 「住」の部プレゼンテーション内容

福井高専Bチーム

宇宙の衣・食・住に関する製品やサービスを学生が考えて提案する「ふくい宇宙アイデアソン」(福井新聞社「ゆめ つくる ふくいプロジェクト」主催、福井工大「ふくいPHOENIXプロジェクト」企画・運営協力、ナカテック、ネスティ特別協力)は6月15日、福井市セーレンプラネットで開かれた。県内高校生や大学生ら12チームが出場し、約3カ月かけて練り上げたアイデアを発表。県内企業の技術や特産品を生かして、宇宙での快適な暮らしを実現する夢のある提案が続出し、審査員をうならせた。

福井高専Bチーム
福井高専Bチーム

■優勝 「福井高専B」 簡単に折り畳める1人部屋

長期間にわたって集団生活する国際宇宙ステーション(ISS)内で、プライベートな時間を過ごしてもらおうと「ちぢまるーむ」と銘打った居住空間を提案した。

1人分のスペースを確保した円筒状で、ISS内の限られたスペースを有効活用できるよう簡単に折り畳めるのが特徴。実際に作った小型の模型では、約20分の1のサイズにできることを証明した。

ちぢまるーむの外側には越前和紙、内側には破れにくく肌触りの良い生地を採用。内側は全面に映像を映し出せることもポイントで、テレビ電話にも切り替えることができ「集団生活による疲れやストレスも飛んでいく、夢のような部屋」とアピールした。

宇宙空間だけでなく、地上での利用も模索。災害時の避難所で個室として活用することや、マンホールトイレ代わりに使用することも提案した。メンバーは「3カ月、放課後残って4人で協力してやってきた。アイデアソンをきっかけに宇宙について詳しく知ることができてよかった」と充実の表情。「実用化してほしいし、次は実際に人が入れるような実寸大で作ってみたい」と意気込んだ。

福井高専Cチーム
福井高専Cチーム

■「福井高専C」 飛び散らず体が洗える装置

宇宙飛行士がISSに滞在中、ぬれたタオルで体を拭いて清潔さを保っていることに着目。シャワーのように体が洗える装置「クリーナ・クリナー」を提案した。

ホースの先端に取り付けたスポンジの回転で体を洗う。スポンジの中心から水とボディーソープが出る仕組み。水が飛び散らないよう外側に吸引口を設けたほか、体の曲面にフィットするよう先端部の形状も工夫した。

吸引された水は、フィルターやろ過装置を通って再利用されることもポイント。「地球でも病院や介護の現場で応用できる」とアピールした。

福井高専Aチーム
福井高専Aチーム

■「福井高専A」 作業効率アップ 眼鏡型AR

宇宙飛行士のISSでの暮らしの快適化や作業の効率化を図ろうと、眼鏡型の拡張現実(AR)端末「GAR」を提案した。

地元鯖江産の眼鏡をベースに、取り外し可能なデバイス(投影機、カメラ、タッチパネルなど)、マイク、風圧測定器を装備した。投影機で作業マニュアルを映したり、カメラで他者の作業内容をリアルタイムで確認したりできる。マウスでクリックする動作を、息の風圧を使ってできるようにしたのも大きな特徴。プレゼンでは「手を使わずカーソルを合わせたところをクリックできる」と力説した。

福井高専Dチーム
福井高専Dチーム

■「福井高専D] 「宇宙酔い」を防ぐイヤホン

宇宙飛行士のISSでの暮らしの快適化や作業の効率化を図ろうと、眼鏡型の拡張現実(AR)端末「GAR」を提案した。

地元鯖江産の眼鏡をベースに、取り外し可能なデバイス(投影機、カメラ、タッチパネルなど)、マイク、風圧測定器を装備した。投影機で作業マニュアルを映したり、カメラで他者の作業内容をリアルタイムで確認したりできる。マウスでクリックする動作を、息の風圧を使ってできるようにしたのも大きな特徴。プレゼンでは「手を使わずカーソルを合わせたところをクリックできる」と力説した。

モッソモッソの会
モッソモッソの会

■「モッソモッソの会」 火星で暮らせる円柱状の家

火星で暮らすための家を考案した。円柱状の構造で、落ち着いた生活ができるよう地球を感じさせるデザインを心掛けた。

天井はクモの巣のような形状で、ここから日光を取り込める。差し込む木漏れ日の中で生活する演出だ。外壁は折り畳み式で、運びやすくした。外壁と内壁の間に水を通すことで、宇宙放射線の影響を低減する。

内部に配置する家具は、いずれも運びやすさを考慮して軽量な素材を採用。キッチンテーブルには、物が浮遊しないよう一部に磁石を用いる工夫が盛り込まれている。

ふくい宇宙アイデアソン、斬新アイデア次々 福井高専Bが優勝

「ふくい宇宙アイデアソン」で優勝した福井高専B=6月15日、福井県福井市セーレンプラネット

 「ふくい宇宙アイデアソン」で優勝した福井高専B=6月15日、福井県福井市セーレンプラネット「ふくい宇宙アイデアソン」で優勝した福井高専B=6月15日、福井県福井市セーレンプラネット

宇宙の衣食住に関する製品やサービスを学生が考えて提案する「ふくい宇宙アイデアソン」には、県内の高校生や大学生ら12チームが出場。「衣」「食」「住」のテーマに分かれ、福井の産業や技術などを生かして若者らしいアイデアを発表した。

アイデアソンは福井新聞社「ゆめ つくる ふくいプロジェクト」が主催。福井工大「ふくいPHOENIXプロジェクト」が企画・運営協力し、ナカテック、ネスティが特別協力した。

チームは約3カ月かけてアイデアを練り上げ、この日の最終プレゼンでは10分の持ち時間で発表。県やJAXAの職員ら6人が、独創性や地域性、実現性など5項目で審査した。

優勝した福井高専Bは、「住」をテーマに発表。長期間にわたって集団生活するISS内で、プライベートな時間を過ごしてもらおうと「ちぢまるーむ」と銘打った居住空間を提案した。

1人分のスペースを確保した円筒状で、簡単に折り畳めるのが特徴。4人は「毎日放課後ずっとやってきた。折り畳み方もポスター用紙を使って何度も試行錯誤しようやくできた。実用化してほしい」と喜びを語った。

2位はいちほまれとそばをコラボさせ、外国人の口にも合うよう世界中の調味料で食べられる宇宙食「1soba」を考えた藤島高の「しー おぶ くらうず」。3位には、宇宙で体を固定せず好きな体勢で寝ることができる洋服をプレゼンした福井工大福井高の「V1」が選ばれた。

最先端の宇宙関連技術がズラリ ロケット、人工衛星の模型など展示も

開発中の月面探査ローバーを披露したJAXAの展示=6月15日、福井県福井市のアオッサ
開発中の月面探査ローバーを披露したJAXAの展示=6月15日、福井県福井市のアオッサ
航空宇宙の国際会議「第32回宇宙技術および科学の国際シンポジウム(ISTS)福井大会」(6月15~21日)の宇宙関連技術展では、国内外の34社・団体が探査機やロケット、人工衛星の模型などを展示。来場者は宇宙開発を支える最新の技術に興味深そうに見入っていた。 JAXAは2020年代に予定する月面探査に関する技術を披露した。注目を集めていたのは、開発中の月面探査ローバー。月の北極や南極に存在すると考えられている水を探すのに使う計画で、掘削するためのドリルを備えている。 「どれだけの量の水があって、どういう質なのかを調べたい」と開発担当者。将来的には「得た水を月面での生活に使ったり、電気分解して水素を取り出して燃料に使ったりすることを考えている」という。月の次には火星を見据えており「地球からロケットで運べる物資は限りがある。火星探査するには、月を拠点にしてエネルギーを調達するのが理想」と話した。 IHIとグループ会社のブースでは、10年6月に地球に帰還した探査機はやぶさの「再突入カプセル」の実物大模型を展示した。カプセルは、小惑星イトカワの試料を収納し地球へ持ち帰ったもので直径約40センチ、高さ約20センチ。はやぶさ本体から分離された後、大気圏突入時の1万度を超える高熱から守るため、外部は特殊な耐熱材を使用。内部には自動で切り離されるパラシュートを搭載している。 三菱重工は、20年度の打ち上げを目指すH3ロケットや3Dプリンターで作ったエンジンの配管を紹介。NECは、はやぶさ2がりゅうぐうに着陸する際、投下して目印にする直径約10センチのボール「ターゲットマーカー」を展示した。

宇宙飛行士・古川聡さんが語る宇宙ステーション 福井で講演

質問者の男の子と笑顔で握手を交わす古川聡さん=6月16日、福井県福井市のアオッサ
質問者の男の子と笑顔で握手を交わす古川聡さん=6月16日、福井県福井市のアオッサ

航空宇宙の国際会議「第32回宇宙技術および科学の国際シンポジウム(ISTS)福井大会」が6月15~21日、福井県福井市で開かれた。月の探査計画、ロケット、人工衛星など宇宙にまつわる学術会議のほか、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の宇宙飛行士古川聡(さとし)さん(55)の講演、県内学生の宇宙に関する研究発表など一般向けの多彩な催しが繰り広げられた。超小型人工衛星「県民衛星」の開発をはじめ、県や県内企業が宇宙分野の取り組みに力を入れる中、県民が広く宇宙への興味を深める機会となった。

「2020年代に月に着陸し、30~40年代には火星に到達する計画です」。福井市のアオッサ県民ホールで講演した古川さんは、JAXAなど世界各国の宇宙機関が目指す月や火星の有人探査計画を紹介した。「火星に降り立つ最初の日本人は、今いる子どもたちの中から出てくるでしょう」と語りかけると、会場の小学生たちは目を輝かせて宇宙で生活する未来を思い描いた。

医師でもある古川さんは、2011年6月~11月に国際宇宙ステーション(ISS)に滞在し、医学実験やISSの維持管理に従事。14年にはJAXAの宇宙医学生物学研究グループ長に就任した。

講演で古川さんは、ISSに物資を運ぶJAXAの無人補給機「こうのとり」の活動を例に、日本の技術が宇宙開発で重要な役割を果たしていると強調した。

ISSに到着したこうのとりはロボットアームでキャッチされるが、古川さんはその大変さを「新幹線に乗っている人が、並んで走る新幹線に乗っている人と握手をするような難しさ」と説明。「(それぞれの新幹線の)速度がぴったり合っていないと握手できません。ISSとこうのとりは1秒間に8キロの速さで飛んでいて、衝突の危険がありますが、技術でコントロールしています」と話した。

会場には約500人が詰めかけ、古川さんへの質問も相次いだ。「一般の人が宇宙旅行に行けるようになる時期は?」の問いに古川さんは「あと15~20年くらいでしょう」と回答。飛行機も昔は経済的に余裕のある人しか乗れなかったが、今では多くの人が利用できるようになったと話し、次第に宇宙に行く費用は安くなっていくと予測した。

「壁にぶつかったときの乗り越え方は?」との質問には「自分が今やっていることは、何のためなのかという原点に戻るよう心掛けています」と答え、ロシア語の習得や雪の中でのサバイバルなど大変だった訓練を振り返った。「宇宙で感動した経験は?」と尋ねられると、「窓から見た地球の美しさですね。地球が一つの生き物のように見えました」と語った。

古川さんに質問した福井市の小学5年生の女児は「宇宙は真っ暗で怖いイメージがあったけど、話を聞いて行ってみたくなった」と笑顔を見せた。チアダンスを習っているといい「宇宙で踊ったらどうなるんだろう」と想像を膨らませていた。

福井で宇宙アイデアソン、12チームアイデア発表 ISTS福井大会合わせ

福井県内の学生が宇宙の衣食住についてアイデアを発表した「ふくい宇宙アイデアソン」=6月15日、福井県福井市セーレンプラネット
福井県内の学生が宇宙の衣食住についてアイデアを発表した「ふくい宇宙アイデアソン」=6月15日、福井県福井市セーレンプラネット

6月15日に開幕した航空宇宙の国際会議「第32回宇宙技術および科学の国際シンポジウム(ISTS)福井大会」に合わせ、宇宙の衣食住に関する製品やサービスを学生が考えて提案する「ふくい宇宙アイデアソン」が、福井市セーレンプラネットで開かれた。福井県内の高校生や大学生ら12チームが出場し、約3カ月かけて練り上げたアイデアを発表。圧縮状態から水で復元させて使用する下着や、国際宇宙ステーション(ISS)で体を洗える装置など、斬新なアイデアが次々披露された。

アイデアソンは福井新聞社「ゆめ つくる ふくいプロジェクト」が主催。福井工大「ふくいPHOENIXプロジェクト」が企画・運営協力し、ナカテック、ネスティが特別協力した。

学生は2~4人でチームをつくり、「衣」「食」「住」のテーマに分かれて3月から活動を開始。県内企業などからアドバイスを受けながら、試行錯誤を重ねてきた。この日の最終プレゼンでは、1チーム10分の持ち時間で発表。県や宇宙航空研究開発機構(JAXA)の職員ら6人が審査した。

優勝したのは、福井高専B。長期間にわたって集団生活するISS内で、プライベートな時間を過ごしてもらおうと「ちぢまるーむ」と銘打った居住空間を提案した。1人分のスペースを確保した円筒状で、簡単に折り畳めるのが特徴。外側に越前和紙、内側には破れにくく肌触りの良い生地を採用し、睡眠時などリラックスできる空間を演出した。内側には全面に映像を映し出せるようにし、「疲れやストレスも飛んでいく」とアピールした。

このほか、宇宙飛行士が「宇宙酔い」を防ぐイヤホンや、作業効率アップを狙った製品「めがね型AR」など独創性あふれるアイデアが出された。審査員の講評では「いろんなアイデアを聞けて感謝している。今後もチャレンジを続けてほしい」「これからの福井、日本を皆さんの若い力で引っ張っていってほしい」などと期待の声が上がっていた。

宇宙技術一堂、ISTS福井で開幕 県民衛星紹介やJAXAトーク

手を取り合ってISTS福井大会の開会を宣言する地元の高校生ら=6月15日、福井県福井市のハピテラス
手を取り合ってISTS福井大会の開会を宣言する地元の高校生ら=6月15日、福井県福井市のハピテラス
手を取り合ってISTS福井大会の開会を宣言する地元の高校生ら=6月15日、福井県福井市のハピテラス

宇宙への好奇心育もう―。航空宇宙の国際会議「第32回宇宙技術および科学の国際シンポジウム(ISTS)福井大会」が6月15日、福井県福井市のハピテラスで開幕した。福井県や県内企業などが進める超小型人工衛星「県民衛星」の紹介、県内学生による宇宙研究発表、宇宙航空研究開発機構(JAXA)のトークショーがあり、来場者は福井発の宇宙の取り組みやさまざまな計画が進む宇宙開発の魅力に思いをはせていた。

ISTSは、日本航空宇宙学会が宇宙研究の発展や次世代の人材育成を目的に隔年で開いていおり、福井では初開催。15、16の両日は県や福井市、県内団体、企業でつくる地元の実行委員会の「宇宙フェスinふくい」と題した一般向けイベントが中心。

オープニングセレモニーでは、杉本達治知事が県民衛星の開発をはじめ、県や県内企業による宇宙分野の取り組みについて説明し「(ISTSを通じて)宇宙産業の育成につなげたい」と強調した。ISTS組織委員長の森田泰弘・宇宙航空研究開発機構(JAXA)宇宙科学研究所教授は「福井は宇宙に関する取り組みがとても熱心。皆さんと一緒に宇宙への夢を膨らませたい」と述べた。

3月に米航空宇宙局(NASA)ケネディ宇宙センターなどを訪れた県内中高生や、JAXAの筑波宇宙センター(茨城県)を見学した小中学生は、日米の宇宙開発など研修で学んだことを発表。「月や火星を目指す計画にわくわくした」「夢は宇宙飛行士になって宇宙人に会うこと」などと将来の夢を語った。

トークショーでは、探査機はやぶさ初号機のプロジェクトを主導した川口淳一郎・JAXA宇宙科学研究所教授と、舘和夫・JAXA理事補佐(福井県出身)が初号機の挑戦を振り返り、2号機に使われている技術を説明した。

会期は21日までの7日間、国内外の研究者ら約千人が参加する。16日午後2時からは、JAXAの宇宙飛行士古川聡さんの講演がある。

生み出そう! ふくい発 宇宙夢アイデア ファシリテーター保坂武文氏

ファシリテーター 保坂武文氏
ファシリテーター 保坂武文氏

福井県は未来の宇宙を見据えて教育や 産業、研究、製造など宇宙学術産業集積 地に向けてあゆみ始めています。

今年6月には福井で宇宙技術のシンポジウム ISTSが開催され、宇宙会議を盛り上げる一環としてふくい宇宙アイデアソン も開かれます。皆さんの宇宙での暮らしに役立つアイデアが、製品化されるかもしれません。

新しい創出アイデアには独創性や実現 性、地域性などが問われます。繊維や眼 鏡、食材などを活用し福井の特色を出して みてください。若狭高校の生徒がサバ缶の 宇宙食を作った先例には製品化に向けた大きなヒントがあります。ふくい宇宙アイデ アソンを通しアイデアをまとめるとともに、モノづくりのプロセスも勉強してください。

モノづくりとは「商品を通じて社会の人々の困り事 を解決し、人が見ていない夢を具現化した商品をお客様に提供する事」であると思っています。これは宇宙も一緒なはずです。

新たに生み出される商品は機能だけでなく、美しさを持ち、時代に旬でなければ 世の中に受け入れてもらえません。世の中のことも理解し、宇宙は生活の延長線上 にあるという視点で、宇宙飛行士が気付 かないところに皆さんの夢を入れ込んで提 案してください。

自分の限界を自分で決めたり、過去の 常識に縛られたりせずに、「枠にはまらず」皆さんの大きな夢に向かって一歩踏み出しましょう。

宇宙×衣食住の可能性を広げる JAXA職員が送るふくい宇宙アイデアソンへのヒント

河合佳祐氏(越前市出身) JAXA宇宙輸送技術部門鹿児島宇宙センター管理課
河合佳祐氏(越前市出身) JAXA宇宙輸送技術部門鹿児島宇宙センター管理課
私は福井県越前市の出身で、JAXAに入り この4月で3年目になります。種子島 宇宙センターに勤務し、事業所管理など事務系の仕事をしています。 宇宙について何かを考えていく際、「宇宙×○○」という考えで行動することが大切だと思います。宇宙とアートのコラボレーション、よりよいスポーツ中継やトレーニング解析に人工衛星 を活用するなど、宇宙を目的としてではなくアプリケーションとして活用していくことが求められます。 こうした考え方で、具体的に衣食住のテーマについて私なり に考えてみました。 まず「衣」では、スペースシャトル用に米国が開発した船外活 動用の宇宙服は10.5億円、生命維持装置だけで9.5億円する ので、どのようなアプローチでコストを下げるか。ロケットでの 輸送を鑑みれば軽くてかさばらないことが重要ですし、事務系的な視点からは宇宙飛行士の人権をいかに尊重するかにも関 心があります。広報担当者としては、ファッション性が高い方が メディアの反応も良さそうです。 食では、おいしくて保存期間が長いことに加え、ロケットの ものすごい振動などから、どのようなパッケージで食材を守る かも求められます。食中毒への法的対応など宇宙空間での決 まり事や、いろんな人種が集まるであろう空問において多文化 的な視点から考えることも面白いと思います。 住では、子どもや高齢者が宇宙で住むためには、という観点 はどうでしょう。湿度や広さに加え、温度にも大きく影響する 色をどうするかも、すごく大事な要素です。建築資材の輸送手 段も考えなければなりません。 皆さんも、考えられることをたくさん、そして真剣に考えてみてください。