福井県工業技術センター見学、衛星開発に夢中 スペースキッズ冬イベント

換気装置で空気中のちりを減らし、精密機器への異物混入を防ぐクリーンブースを見学するキッズ。「ここで衛星を組み立てるんだよ」=2月22日、福井市の県工業技術センター
換気装置で空気中のちりを減らし、精密機器への異物混入を防ぐクリーンブースを見学するキッズ。「ここで衛星を組み立てるんだよ」=2月22日、福井市の県工業技術センター

野外体験や科学実験を通して宇宙への興味を育む「スペースキッズ」(福井信用金庫特別協賛)の冬イベントが2月22日、福井市の福井県工業技術センターで開かれた。第3期生の活動の締めくくりとして、2020年4~9月に打ち上げる予定の県民衛星「すいせん」など超小型人工衛星のことを学んだり、衛星開発に使う試験設備を見学したりして、宇宙の魅力や宇宙に関わる仕事について理解を深めた。

宇宙分野や科学技術に携わる人材育成を目指す福井新聞社の「ゆめ つくる ふくいプロジェクト」の一環。県内の小学5、6年生51人が参加した。

県民衛星「すいせん」に関するクイズに答えるキッズ。全問正解も続出=2月22日、福井市の県工業技術センター
県民衛星「すいせん」に関するクイズに答えるキッズ。全問正解も続出=2月22日、福井市の県工業技術センター

「人工衛星はどのくらいのスピードで地球を回っている?」―。イベントでは県民衛星プロジェクトを進める県新産業創出課の職員が、衛星に関する3択クイズを出題。昨夏のキャンプなどを通して宇宙に親しんできた子どもたちは、自信満々に答えていた。

同センターの見学ツアーでは、過酷な宇宙空間を再現する振動試験機や熱真空試験機、衛星が出す電波を測る電波無響室など四つの部屋を巡った。武生東小5年の男児は「一つの衛星のために、たくさんの人が時間を掛けてチェックするんだ」と興味津々の様子だった。

イベント後に解団式を行い、代表として記念品を受け取った春山小6年の男児は活動を振り返り「宇宙には恐怖を感じていたけれど、いろいろ体験して興味が湧いてきた」と笑顔を見せた。森田小6年の男児も「宇宙が身近になっていることが分かった。そろそろ僕らも宇宙に行ける日が来るんじゃないかな」と夢を膨らませていた。

講演で超小型衛星開発の話に聞き入るキッズ
講演で超小型衛星開発の話に聞き入るキッズ
講演で超小型衛星開発の話に聞き入るキッズ
講演で超小型衛星開発の話に聞き入るキッズ

スペースキッズ、県民衛星「すいせん」に熱中 福井県工業技術センターでイベント

宇宙空間の環境を再現する熱真空試験機(左)についての説明を熱心に聞くスペースキッズの団員たち=2月22日、福井市の福井県工業技術センター
宇宙空間の環境を再現する熱真空試験機(左)についての説明を熱心に聞くスペースキッズの団員たち=2月22日、福井市の福井県工業技術センター

野外体験や科学実験を通して宇宙への興味を育む福井新聞社の「スペースキッズ」(福井信用金庫特別協賛)の冬イベントが2月22日、福井市の福井県工業技術センターで開かれた。2020年度上半期に打ち上げを控える県民衛星「すいせん」を学ぶクイズや講演、同センターにある衛星の環境試験設備を見学するツアーがあり、子どもたちは福井の宇宙産業の「今」に触れた。

宇宙分野や科学技術に携わる人材育成を目指す福井新聞社の「ゆめ つくる ふくいプロジェクト」の一環で、スペースキッズ3期生の最終イベント。県内の小学5、6年生51人が参加した。県職員と専門家がクイズを交えながら、すいせんなど超小型人工衛星の世界を紹介した。

見学ツアーでは、衛星が放つ電波の強さを測る大型電波無響室や振動試験機、宇宙環境を再現する熱真空試験機など、衛星の機能や耐久性をテストする設備を巡った。子どもたちは人工衛星製造の“現場”に、目を輝かせていた。

第3期のスペースキッズは昨年6月に結成。8月にはあわら市で「星空キャンプ」を行い、ロケットが飛ぶ仕組みを学んでペットボトルロケット作りに挑戦するなどの活動を繰り広げた。

■アクセルスペースCEO講演も

「人工衛星を安く作ることができれば、もっと手軽に、宇宙でいろいろなことができる」―。県工業技術センターで22日開かれたスペースキッズの冬イベント。県民衛星「すいせん」をはじめ、超小型人工衛星の世界が子どもたちを引き付けた。

超小型人工衛星の製造など、宇宙に関わる仕事について話すアクセルスペースの中村友哉さん

県民衛星技術研究組合に参画するアクセルスペース(東京)CEOの中村友哉さん(40)は講演で、世界で初めて運用に成功した10センチ角の超小型人工衛星「キューブサット」など大学時代に取り組んだ研究について説明。すいせんを含む多数の人工衛星を飛ばして地球を観測する計画も披露し、「決まった場所を撮影するなど頻繁に観測することで、例えば作物の生育状況をチェックしたり最新の地図を作製したり、新しいことができる」と話した。

県内企業による超小型衛星製造について県新産業創出課の山下裕章さん(38)が、昨年11月に宇宙空間放出に成功した3U(縦横10センチ、長さ30センチ)サイズのキューブサットなどを紹介した。子どもたちは、宇宙空間に近い過酷な環境を再現する試験機など衛星開発に必要な設備も見学した。

武生東小5年の男児は「一つの衛星を、たくさんの人が時間を掛けてチェックするんだ」と感心した様子。春山小6年の男児は、内部をほぼ真空状態にして約150度~マイナス約200度に設定できる熱真空試験機に興味を引かれたといい「ものづくりが好きなので、将来は人工衛星を作ってみたい」と笑顔を見せていた。

福井の県民衛星「すいせん」、キーマンの思い

「すいせん」と同タイプの超小型人工衛星の模型(左)が置かれたオフィス。「要求条件を満たす、低コストで素早い衛星作りには、大学からの蓄積が生きている」と話す中村友哉さん=東京・日本橋

2020年―。福井の県民衛星「すいせん」が、いよいよ打ち上げの年を迎えた。カザフスタンのバイコヌール宇宙基地から4~9月にも飛び立つ予定で、福井の宇宙産業が次のステップを踏み出す。プロジェクトのキーマンたちにこれまでの取り組みを振り返ってもらい、思いを語ってもらった。

⇒【図解】県民衛星「すいせん」とは

「すいせん」と同タイプの超小型人工衛星の模型(左)が置かれたオフィス。「要求条件を満たす、低コストで素早い衛星作りには、大学からの蓄積が生きている」と話す中村友哉さん=東京・日本橋
「すいせん」と同タイプの超小型人工衛星の模型(左)が置かれたオフィス。「要求条件を満たす、低コストで素早い衛星作りには、大学からの蓄積が生きている」と話す中村友哉さん=東京・日本橋

■アクセルスペース(東京) 中村友哉CEO

東京・日本橋のオフィス街に立つ、モダンな3階建てビル。この中で人工衛星が作られているとは、想像がつかないだろう。超小型衛星に特化したビジネスを展開する宇宙関連ベンチャー「アクセルスペース」が入居している。

県民衛星技術研究組合に参画する同社CEOの中村友哉さん(40)は「地方での人工衛星開発は、打ち上げ花火に終わるケースが多い。衛星をどう利用し、継続していくかが肝心」と話す。

2008年、国の大学発ベンチャーへの助成金を受け起業した。「超小型衛星が社会に役立つツールになるという確信があった」。宇宙航空研究開発機構(JAXA)の技術実証衛星の製造と運用を受注するなど、これまで5基の開発・運用に成功した。

県民衛星プロジェクトでは19年3月、組合との間で衛星の製造・運用に関する契約を結んだ。アクセルスペースは22年を目標に超小型人工衛星を数十基飛ばし、世界中の陸地を毎日観測する「アクセルグローブ」計画を進めており、「すいせん」はその衛星の一つになる。

県民衛星の取り組みに「人工衛星製造を産業にするという自治体は初めて。期待している」。福井県が目指す人工衛星量産化の可能性については「図面通りに作るだけではない、クリエイティブなものづくりが求められる。新しい産業を切り開いてほしい」とエールを送った。

【なかむら・ゆうや】1979年、三重県生まれ。2007年、東京大大学院博士課程修了。在学中、世界初の大学生手作りの超小型人工衛星「キューブサット」を含む3基の衛星開発に携わる。東大大学院航空宇宙工学専攻の特任研究員を経て08年にアクセルスペースを設立。内閣府宇宙政策委員会委員を務める。

人工衛星による画像を示しながら「衛星データを握る、新しいビジネスになる」と語る進藤哲次さん=福井市羽水2丁目のネスティ本社
人工衛星による画像を示しながら「衛星データを握る、新しいビジネスになる」と語る進藤哲次さん=福井市羽水2丁目のネスティ本社

■県民衛星技術研究組合 進藤哲次理事長

「飛行機と違って人工衛星は常に上空を飛んでいて、定期的に撮影できる。地図ではイメージできない地形の変化が分かる。監視が必要な分野に衛星データは最適だ」

衛星画像の利用システムを開発する、県民衛星技術研究組合の進藤哲次理事長(69)=ネスティ(福井市)社長=は、福井発の宇宙ビジネス創出に意欲を燃やす。衛星データの利活用分野に関しては、ネスティ、福井ネット(福井市)、福井システムズ(坂井市)、富士通(東京)が共同で取り組んできた。

衛星が捉えた福井市街がパソコン画面に広がる。開発した衛星画像表示システムは、土砂災害や急傾斜地の危険区域、病院や避難所、河川の水位観測ポイントなどを画像に表示できる。以前の画像と比較すれば、変化のあった箇所をマーキングしてくれる。

システムは行政での利用を念頭に、すでに県で試験を進めている。森林や河川、環境、農業など各部署の目線で利用方法を検証。アイデアを出してもらい、機能強化につなげていく。

進藤さんは「自治体が持つ防災システムに、衛星データを連携させるアプリケーションを作り販売したい。いよいよ打ち上げ。ビジネスも加速させていく」と決意をみなぎらせた。

宇宙絵画コンクール、最優秀賞9人含む96人に賞状 エンゼルランドふくいで表彰式

宇宙絵画コンクールで最優秀賞の賞状を受け取る田村十兵衛君(中央)ら=11月23日、坂井市の福井県児童科学館
宇宙絵画コンクールで最優秀賞の賞状を受け取る田村十兵衛君(中央)ら=11月23日、坂井市の福井県児童科学館

宇宙分野や科学技術に携わる人材育成を目指す「ゆめ つくる ふくいプロジェクト」の第3回県小・中学生宇宙絵画コンクール(福井新聞社主催、県児童科学館共催、富士通福井支店特別協力)の表彰式が11月23日、坂井市の福井県児童科学館で開かれた。田村十兵衛君(福井市)ら最優秀賞9人をはじめ優良賞以上の96人に賞状などを贈り、豊かな感性と想像力をたたえた。

福井新聞社の吉田真士社長は「宇宙も皆さんも無限の可能性を秘めている。夢を持って大きく成長してほしい」とあいさつ。審査委員長を務めた洋画家の清水正男さんが講評し、「想像力やアイデアあふれる作品に、審査していてワクワクした。遊び、学び、絵をいっぱい描いて」と激励した。最優秀賞のうち県児童科学館の開館20周年記念毛利衛賞は、同館名誉館長の毛利さんがプレゼンターを務めた。

ロケットや大好きなサッカーをしている様子を伸び伸びと表現し、最優秀賞に輝いた田村君は「いっぱい人が乗ってもらえるように大きなロケットを描いて、目立つように黄色にした」と笑顔を見せた。「浮遊大陸」をテーマにダイナミックな作品を描いた村井乃彩さん(福井市)は「特にこだわったのは日本列島。おばあちゃんからもらった日本地図の下敷きを参考にした」と話した。久保莉乃さん(若狭町)は、窓から外を眺めると宇宙飛行士が手を振っている場面を描いた。「1回は宇宙へ行ってみたいな」と話していた。

コンクールには、県内の小中学校と特別支援学校から過去最多の5782点の応募があった。最優秀賞9点、優秀賞15点、特別賞18点、優良賞54点など入賞計1188点を決めた。

優良賞以上の96点を12月1日まで、県児童科学館で展示。秀作以上の366点を12月24日~1月5日、福井新聞社エントランスと風の森ギャラリーで展示する。

どこでもプラネタリウム、小浜上映会盛況 若狭図書学習センターで開催

ドーム内に広がる星空を堪能する子どもたち=11月24日、小浜市の福井県立若狭図書学習センター
ドーム内に広がる星空を堪能する子どもたち=11月24日、小浜市の福井県立若狭図書学習センター
ドーム内に広がる星空を堪能する子どもたち=11月24日、小浜市の福井県立若狭図書学習センター

福井県内の大学生、福井高専生、高校生と福井新聞記者が取り組む「どこでもプラネタリウム(どこプラ)プロジェクト」(アストロアーツ、清川メッキ工業、鯖江精機、ナカテック、富士通福井支店、福井文化服装学院特別協力)は11月24日、移動式プラネタリウムドームの出張上映会を福井県小浜市の福井県立若狭図書学習センターで開いた。家族連れら約90人がドーム内に広がる星空を堪能した。

どこプラは、宇宙や科学技術に携わる人材育成を目指す福井新聞社の「ゆめ つくる ふくいプロジェクト」の一環。約1年掛けて製作したドームは直径5メートル、高さ3・5メートルの布製で、一度に約30人が入れる。
この日の上映は、福井ライフ・アカデミーふるさと未来講座として行われた。空気を送り込んで膨らんだドームを見た子どもたちは「おっきい」と歓声を上げて中に入り、プロジェクターで投映された星空に見入った。

どこプラのメンバー竹内陽香さん(高校2年)と小川実咲貴さん(同)が解説を担当し、四季の星座や24日に見える星空を紹介した。小浜小5年の女児は「解説が分かりやすくて、とてもきれいな星空だった」と声を弾ませていた。