プラネタリウム、試作品作りに奮闘中 ドームや投影機「課題山積み」

ドームを作る作業。素材のビニールシートを二等辺三角形に切って張り合わせるための準備として、段ボールを使って印をつけていく=福井県福井市の福井大学文京キャンパス
ドームを作る作業。素材のビニールシートを二等辺三角形に切って張り合わせるための準備として、段ボールを使って印をつけていく=福井県福井市の福井大学文京キャンパス
ドームを作る作業。素材のビニールシートを二等辺三角形に切って張り合わせるための準備として、段ボールを使って印をつけていく=福井県福井市の福井大学文京キャンパス

持ち運び可能なプラネタリウムドームを作り、子どもたちに星空を楽しんでもらう「どこでもプラネタリウムプロジェクト」(清川メッキ工業、鯖江精機、ナカテック特別協力)がスタートして3カ月。メンバーの大学・高校生と本紙記者は、まずは小型版の試作に奮闘中だ。投映機の形やドームの素材など、すべて自分たちで考えながら作業を進めているため、たびたび課題にぶつかる場面も…。一つ一つ地道にクリアしながら、本番用のドーム完成に向けて前進している。

星800個

最終目標は子ども約30人が入れるドーム(直径5メートル予定)を本年度内に作ること。まずは試作を通じて完成イメージを膨らませることにした。

投映機は、比較的手軽に製作できるとの情報を元に「ピンホール式」を採用。直径約30センチの半球のアクリル製の容器に小さな穴を開け、内側から照らすことでドームの天井に星を映す仕組みだ。

穴の大きさは星の明るさ(1~4等星)によって変える。1等星を映す最も大きな穴は直径2ミリ、最も小さな穴は同0.5ミリで、合計約800個。星の座標を記した紙をアクリル容器に貼り、星の部分を電動ドリルで開けていく。想像以上に慎重かつ根気のいる作業だ。これに光源の豆電球や電池、土台の木箱などを組み合わせ、投映機に仕上げる。

今後は、実際に星を鮮明に映し出せるかや、星空を回転させるなどの「見せ方」をどうするかが課題になりそうだ。

課題山積み

投映機を包むドームは、農業用の黒いビニールシートを使用。段ボールで二等辺三角形の型紙を作り、それに合わせて切ったシート16枚をテープでつなぎ合わせて作った。

扇風機で風を送って膨らませる実験を進めているが、空気が漏れて膨らまなかったり、シートの遮光性が低かったりするなど、素材選びでも頭を悩ませている状態だ。

メンバーは引き続き試作や実験を進めながら、プラネタリウムドームを製作した経験がある他県の大学への視察も計画している。

学生のリーダーを務める福井大工学部応用物理学科3年の浅見祥宏さんは「メンバー全員が初心者で、ゼロからのスタートのため課題は山積み。それでも満天の星空やオリジナルの星座を見せたい強い気持ちがあるので、みんなで協力しながら実現させたい」と意気込んでいる。

手作りパラシュートに熱中 スペースキッズ、坂井でコンテスト

パラシュート作りに取り組むスペースキッズのメンバー=6月30日、福井県坂井市の県教育総合研究所
パラシュート作りに取り組むスペースキッズのメンバー=6月30日、福井県坂井市の県教育総合研究所

科学実験などを通して宇宙への興味を育む「スペースキッズ」(福井信用金庫特別協賛)のイベント「パラシュートコンテスト」が6月30日、福井県坂井市の県教育総合研究所で開かれた。県内小学5、6年生約80人が、コーヒーフィルターで作ったパラシュートを落下させる競技を楽しんだ。

⇒「パラシュートコンテスト」のウェブ写真館はコチラから

イベントは、宇宙や科学技術に携わる人材育成を目指そうと福井新聞社が展開している「ゆめ つくる ふくい」プロジェクトの一環。同研究所の協力を得て実施した。

紙製のコーヒーフィルターと金属のおもり、糸を材料に、子どもたちは3~4人のチームに分かれて製作した。フィルターを複数枚つなげるなど工夫し、ゆっくり落ちるパラシュートを目指して試行錯誤を重ね、科学の楽しさや難しさを体感した。

コンテストは、講堂として使われている体育館で行った。高さ約7メートルの天井付近に、各チームのパラシュートを入れた箱を設置。合図とともに箱の底を開かせて、パラシュートを落下させた。滞空時間と、地面の的の中心にどれだけ近く落下したかで競った。子どもたちは祈るような表情でパラシュートの落下を見守り、狙い通りの結果が出ると歓声を上げて喜んだ。

優勝したのは、フィルターを4枚つなげたパラシュートを作り、5・87秒の滞空時間を記録した鶴谷百恵さんらのチーム。鶴谷さんは「空気の抵抗が大きくなるよう工夫した。優勝できて、とってもうれしい」と満面の笑みを浮かべていた。

「どこでもプラネタリウム」計画始動

 真っ暗な部屋の天井に、輝く点がいくつも浮かび上がる。その点と点が結びつくと、さまざまな星座になった。見渡すと、いつの間にか壮大な星空が広がっていた―。幼いころにプラネタリウムを見に行ったとき、映し出された星が人工的なものとは思えなかった。自然と宇宙への想像がかき立てられた。

 「子どもたちに星空を楽しんでもらうため、プラネタリウムの装置を一緒に作ってみませんか」。県内の大学生や高校生に協力を呼び掛けたところ、何人もの学生が「面白そう。やってみたい」と賛同してくれた。

 プロジェクト名は「どこでもプラネタリウム」(清川メッキ工業、鯖江精機、ナカテック特別協力)。略して「どこプラ」。メンバーは福井大3年の6人、仁愛大2年の1人、高志高1年の2人、福井新聞記者4人の計13人。

 力を合わせて作るのは、20~30人が入れるプラネタリウムドーム。ドームの中に投映機などを設置し、満天の星空を映し出す予定だ。「どこでも」の名の通り、ドームは持ち運べるようにする。さまざまな場所に出張上映して、多くの人に親しんでもらう。

 4月1日、福井市の福井大文京キャンパスにメンバーが集まり、計画がスタートした。「せっかく作るのなら、世界に一つだけのプラネタリウムにしたいね」。メンバーで意見を出し合い▽福井の特徴を映し出す(恐竜、眼鏡など)▽地球以外から見た星▽その日の夜に見える星空―などの案が挙がった。

 ただ、全員が初心者。ドームの素材や投影機の性能はどうするのかなど、知識も技術も不足している。まずは比較的手軽に製作できる「ピンホール式」の装置を作ることに決めた。レンズを使わない簡単な仕組みのため、さまざまな製作例があり我々でも作れそうだ。

 学生のリーダーを務める福井大工学部応用物理学科3年の浅見(あさうみ)祥宏さんは「分かりやすく星について説明できる装置にしたい。少しずつ前に進み、みんなでやり遂げたい」と意欲を見せている。

スペースキッズ結団式 サイエンスショーに100人夢中

サイエンスショーで科学の魅力を体感するスペースキッズの団員=2018年5月13日、福井新聞社

 宇宙の不思議、たくさん学ぶぞ―。天体観測や施設見学を通じて宇宙や科学への興味を育む「スペースキッズ」(福井信用金庫特別協賛)の結団式が13日、福井新聞社・風の森ホールで開かれた。本社プロジェクト「ゆめ つくる ふくい」の一環で、メンバーは宇宙好きの県内小学5、6年生100人。この日行われたサイエンスショーでは興味津々な様子で実験に見入り、これから体験するさまざまな活動への思いを膨らませた。

結団式には保護者らを含め約200人が出席した。福井新聞社の吉田真士社長、西川一誠知事、応援団長を務める高橋俊郎・福井信金理事長が「科学や宇宙に興味を持ってもらいたい」「将来は世界や宇宙で活躍する人材になってほしい」などと団員を激励した。スペースキッズのサポーターを務める宇宙飛行士の山崎直子さんもメッセージを寄せた。

 団員を代表して決意表明したのは、昨年に引き続いて参加した山内諒人君(福井市)。今年2月、坂井市の県児童科学館と国際宇宙ステーション(ISS)を結んで金井宣茂宇宙飛行士と交信したイベントについて「あの感動が今でも心に残っている。今回も仲間たちと宇宙や科学について知識を深めたい」と力強く宣誓した。

 「ゆめ つくる ふくい」の一環で、県内高校生や大学生、福井新聞記者が共同で取り組んでいるプラネタリウムドーム作りの説明もあった。福井大3年の翠(みす)勇弥さんと中川弥(わたる)さん、仁愛大2年の片岡莉奈さんが「自分たちならではのプラネタリウムを作りたい。完成したら、みんなにきれいな星空を見てもらいたい」と話した。

 スペースキッズは今回で2期目。団員は、天体観測やペットボトルロケット作り、施設見学などの活動を通し、1年間にわたって宇宙や科学の魅力に触れる。

サイエンスショーでは、県児童科学館のスタッフが軽妙なトークとともに宇宙に関するさまざまな実験を披露し、会場を盛り上げた。団員たちは「宇宙や衛星を身近に感じた」「科学がもっと好きになった」と笑顔だった。

 同館の中川眞さん(67)と青山悠奈さん(31)が“先生と助手”役で登場した。中川さんは飛行機の模型を手に「飛行機って軽いって知ってる?」と質問。全長80メートルのジャンボジェット機は重さ200トンだが、全長40センチに縮小すると重さはたった25グラムになると説明した。一方で、ロケットを同様に縮小すると重さは400グラムになると話し、「飛行機は翼の揚力で浮きながら飛ぶが、ロケットはエンジンの燃料を燃やし続けて飛ぶ」と違いを解説した。

 水素やアルコールなどを燃料にしたペットボトルロケットの発射も実演。「プシュー」と高音を残して一瞬のうちに進むロケットに、団員から大きな拍手がわき起こった。

 中川さんは、人工衛星に見立てた風船を使い、衛星利用測位システム(GPS)の仕組みも紹介した。日本版GPSをつくるために2017年秋に4号機が打ち上げられた準天頂衛星「みちびき」を例に挙げ、「衛星は高度約3万6千キロの軌道から電波を出しており、3基以上の衛星を利用することで地図上のどこにいるかが分かる」と説明した。

 このほか、宇宙空間で方角を示すこまの一種「ジャイロスコープ」の仕組みについては、団員たちが大型こまを手に持って体感する実験などもあった。

 浦木嶺歩(ねお)君(敦賀市)は「宇宙や衛星って別次元で遠い存在だったけれど、すごく身近で面白いものだと感じた」と笑顔で話していた。徳田優來(ゆら)さん、小山青奈(せな)さん(坂井市)は「いろんな実験があり、びっくりの連続だった。小学生最後の思い出になる1年になれば」と話していた。

宇宙飛行士・山崎直子さんに質問 福井新聞スペースキッズ企画

天体観測や施設見学を通じて宇宙や科学への興味を育む「スペースキッズ」(福井信用金庫特別協賛)の子供たちの質問にスペースキッズのサポーターを務める宇宙飛行士の山崎直子さんが答えてくれた。

Q 宇宙飛行士の試験でつらかったことはありますか?

 閉鎖空間で1週間、缶詰めになりながら過ごしたり、一つ一つが何をテストしているのか、よく分からずに作業したりしていたので、緊張感はありました。でも、こんなこともやるんだとか、いろいろな人と出会うなど、楽しいことの方が多かったですよ。

Q 宇宙でタマネギは栽培できますか?

 現在、宇宙船の中で自給自足できるようにするために「宇宙農業」の実験が進められています。タマネギの栽培はできていませんが、ロメインレタスは育てられました。油井亀美也宇宙飛行士が宇宙で収穫して試食したことも話題になりましたよ。

Q 宇宙で暮らしていて体に何か変化はありましたか?

 無重力で歩く必要がないため、足腰の筋肉や骨が弱くなりがちなので、それを防ぐために宇宙船の中でも運動をしています。そのため、今は筋肉や骨は衰えずにすんでいます。また、骨と骨の隙間が圧迫されず、身長が2~5センチ程度伸びますが、地球に戻ればすぐ重力に押されて元の身長に戻ってしまいます。

Q 宇宙滞在中にけがをしたらどうするんですか?

 事前に応急処置の訓練は受けていて(虫歯の際の抜歯なども)、仲間同士でできるだけ処置をします。ただ、緊急の場合は、緊急ボートを使って24時間以内に地球に帰還できるようになっています。今後、月や火星に滞在するようになると、すぐには地球に戻れないので、もっと研究が必要になります。

Q UFO(未確認飛行物体)を見たことはありますか。

 私は残念ながら見られなかったのですが、宇宙は広いので、どこかにほかの生命がいてほしいなと思っています。

スペースキッズサポーター山崎直子さんメッセージ

山崎直子さんからのメッセージ

 スペースキッズの皆さん、結団おめでとうございます。

 これから、どんな活動があるのかワクワクされているのではないでしょうか。私の好きな言葉に「ワンダフル」という言葉があります。ワンダー(未知なこと)がフル(たくさん)であることが、素晴らしいという意味になっています。

 このスペースキッズの活動を通じて、きっといろいろな出会いや発見があるでしょう。私自身も子どもの頃に星空を観測したことが、宇宙へ興味を抱くきっかけになりました。実り多い1年間となることを応援しています。

スペースキッズ、宇宙科学の夢へ発進 福井新聞社で2期目結団式

スペースキッズ結団式で、これからの活動に向け気合を入れる団員たち=2018年5月13日、福井県福井市の福井新聞社

宇宙分野や科学技術に携わる人材育成を目指す「ゆめ つくる ふくい」プロジェクトを展開する福井新聞社は5月13日、子ども組織「スペースキッズ」(福井信用金庫特別協賛)の結団式を本社・風の森ホール(福井県福井市)で行った。宇宙や科学の不思議をもっと知りたい―。団員たちは、さまざまな体験を通じて宇宙にまつわる知識や夢を広げていくことを誓い合った。

2期生となるスペースキッズには県内の小学5、6年生100人が参加。式には保護者らを含め約200人が出席した。福井新聞社の吉田真士社長はあいさつで、県内企業などが2020年度に人工衛星の打ち上げを目指していることを紹介し「皆さんにはその応援団として活動してもらい、科学や宇宙に興味を持ってもらうことを期待しています」と話した。

西川一誠知事は「世界や宇宙を目指す人材になってもらいたい」、応援団長を務める高橋俊郎・福井信金理事長は「体験を通じて宇宙への夢を探ってほしい」とそれぞれエールを送った。スペースキッズのサポーターを務める宇宙飛行士の山崎直子さんも激励メッセージを寄せた。

団員を代表し、昨年度に引き続いて参加した山内諒人君(福井市)が「(2月に坂井市の県児童科学館で)金井宣茂宇宙飛行士と交信できた感動が今でも心に残っている。今回も宇宙や科学について知識を深めたい」と力強く抱負を述べた。

サイエンスショーもあり、県児童科学館のスタッフが人工衛星に見立てた風船を使い、衛星利用測位システム(GPS)の仕組みを紹介した。ペットボトルロケットの発射も実演した。県内高校生や大学生、福井新聞記者が共同で取り組んでいるプラネタリウムドーム製作プロジェクトの説明もあった。

団員は、天体観測、ペットボトルロケット作り、施設見学など1年間の活動を通じて宇宙や科学の魅力に触れる。結団式の詳しい内容は、26日付の特集面で紹介する予定。

第1回宇宙絵画コンクール

 ■応募作3140点を審査(2017年10月)

宇宙分野や科学技術に携わる人材育成を目指す「ゆめ つくる ふくいプロジェクト」の一環として、今年初めて募集した「宇宙絵画コンクール」(福井新聞社主催、オーイング特別協賛)の審査会が2017年10月14日、福井新聞社で行われた。福井県内3140人の子どもたちが描いた「宇宙での夢」を専門家6人が審査し、最優秀賞に川端奏介君(今庄小1年)ら6人を選んだ。

子どもたちの夢にあふれる作品が寄せられた宇宙絵画コンクールの審査会=2017年10月14日、福井新聞社

県内の82小学校、24中学校、2特別支援学校から小学生2650点(特別支援学校11点含む)、中学生490点の応募があった。画材はクレヨン、水彩、油彩など自由。テーマの「宇宙での夢」に沿って▽宇宙でしてみたいこと▽こんな宇宙旅行をしたい▽宇宙でこんな仕事をしたい▽未来の宇宙の様子―など、子どもたちの夢があふれる作品が寄せられた。

審査は元中学校美術教諭で洋画家の清水正男さんが審査委員長を務め、学年ごとに作品をチェック。小学生、中学生の部それぞれの最優秀賞3点、優秀賞6点、オーイング賞9点をはじめ、優良賞、秀作、入選を合わせて入賞計675点を選出した。清水審査委員長は「作品から子どもたちが、宇宙に対する希望や夢を膨らませて楽しんで描いたことが分かる。中でも子どもの自由な発想が伝わってくる作品を入賞にした」と話した。

 

 ■宇宙絵画コンクール、250人を表彰(2017年11月)

宇宙分野や科学技術に携わる人材育成を目指す「ゆめ つくる ふくいプロジェクト」の一環として初めて実施した「県小・中学生宇宙絵画コンクール」(福井新聞社主催、オーイング特別協賛)の表彰式が2017年11月3日、福井新聞社・風の森ホールで行われた。最優秀の一人に選ばれた小学6年の谷口舞さんら秀作以上の入賞者に賞状などが贈られた。

宇宙絵画コンクールで最優秀賞の賞状を受け取る小学1年の川端奏介君(中央)ら=2017年11月3日、福井新聞社・風の森ホール

福井新聞社の吉田真士社長は「福井の未来を担う皆さんの可能性は宇宙に負けないくらい無限大。これまで以上に大きな夢を抱いて、成長していってください」、オーイングの浜野正和専務は「夢が広がる壮大な作品ばかりで感動しました」とあいさつした。

福井県内の82小学校、24中学校、2特別支援学校から小学生2650点(特別支援学校11点含む)、中学生490点の応募があった。この日は秀作以上の250人を表彰。1人1人に賞状などが手渡された。