マイ・ロケット完成! 大野で星空キャンプ

野外体験や科学実験を通して宇宙への興味を育む福井新聞社の「スペースキッズ」(福井信用金庫特別協賛)のイベント「宇宙っておもしろい 星空キャンプで夏満喫」が2日、福井県大野市の県奥越高原青少年自然の家を舞台に2日間の日程で始まった。初日は小学5、6年生の団員89人が、ペットボトルロケット作りに挑戦。プラネタリウムでの星座観察も満喫し、団員たちは「いつか本物のロケットを打ち上げてみたい」と宇宙に思いをはせていた。

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イベントは、宇宙分野や科学技術に携わる人材育成を目指そうと福井新聞社が展開している「ゆめ つくる ふくいプロジェクト」の一環。

「ロケットはどうして飛ぶのかな」。講師の県児童科学館(坂井市)職員の問い掛けで始まったペットボトルロケット作り。団員は、ペットボトル内の水が空気で押し出される反動で飛んでいく仕組みを学び、燃料は違っても本物のロケットと同じ原理で飛ぶことに興味津々。バランスを取るためペットボトルに取り付ける羽根の角を丸くしたり、とがらせたりして思い思いのデザインを考え、自分だけのロケットを完成させた。

阿宇礼三倶得(あうれみげる)君(社北5年)は「遠くまで飛びそう」と仕上がりに満面の笑み。宇宙飛行士になるのが夢と話し、「大きくなったら本物のロケットに乗りたい」と目を輝かせていた。

夜は県自然保護センターに移動し、プラネタリウムで星座観察を楽しんだ。福井信用金庫による金融教室もあった。3日はペットボトルロケット大会を開き、団員が自作した自慢のロケットを飛ばす。

真空対策、防水もOK 撮影機体実験着々と

実験を行う福井高専生

福井高専生5人と福井新聞の記者3人が挑戦中のスペースバルーンプロジェクト「ふーせん宇宙船」(鯖江精機、ナカテック特別協力)。カメラを搭載した箱形の機体を風船につるして打ち上げようという取り組みなのだが、成功に向けてクリアすべき新たな課題が見つかった。上空での「気圧」の問題だ。

計画では、風船は高度約3万メートルまで上がって破裂し、海に落下した機体を回収する。機体は安価で軽く、加工しやすい発泡スチロール製の箱。機体の外側にはカメラのレンズを露出させる穴を開けており、ここにわずかな隙間ができるが、樹脂で埋めて密閉した。隙間から外気が入り込んだり、海に落ちた後に海水が流入するのを防ぐためだ。

しかし、ここで懸念が生じた。気圧は高度が上がるほど低くなる。一方、密封された箱の中は気圧が低くならないため、外気と気圧差ができ、箱が内部からの圧力で壊れる可能性があるのではないか。

上空で箱が破裂―。そんな最悪の映像が頭に浮かんだ。ほかのメンバーに相談すると、福井高専4年の渡辺虎生太(こおた)さんが「その可能性もあるかも。実験して確かめてみましょう」と提案。早速、準備に取り掛かった。

宇宙へ興味、瞳キラキラ スペースキッズ結団式

スペースキッズ結団式で気合を入れる団員たち=24日、福井新聞社

宇宙分野や科学技術に携わる人材育成を目指す「ゆめ つくる ふくいプロジェクト」を展開している福井新聞社は24日、子ども組織「スペースキッズ」(福井信用金庫特別協賛)の結団式を本社・風の森ホールで行った。宇宙にまつわるさまざまな体験を通して夢を描き、羽ばたくきっかけに―。そんな願いを託された子どもたちは、楽しみながら宇宙への興味を広げ、活動していくことを誓い合った。

スペースキッズは福井県内の小学5、6年生101人で構成している。結団式には児童や保護者ら約200人が出席した。福井新聞社の吉田真士社長は「宇宙は無限の可能性を秘めている。皆さんの可能性も無限。夢を持って成長してください」とあいさつ。西川一誠知事は福井県や県内企業などが2019年度の打ち上げを目指す県民衛星の取り組みを紹介し「さまざまな活動を通じて活躍してくれることを期待しています」と激励した。

応援団長を務める高橋俊郎・福井信用金庫理事長は「福井には宇宙に関わる企業がたくさんある。将来、福井の企業で夢を実現してくれたらうれしい」とエールを送った。

日本人2人目の女性宇宙飛行士で、スペースキッズのサポーターを務める山崎直子さんはビデオメッセージで活動に期待を寄せた。宇宙航空研究開発機構(JAXA)技術参与の舘和夫さん(福井県坂井市出身)は講演で、宇宙飛行士の宇宙での生活の様子などを紹介した。

団員に向けて送られた山崎直子さんのビデオメッセージ

団員を代表して石田愉楽君が「星空観察や科学実験を楽しみにしています。宇宙の仕組みや科学の不思議を学びたい」と力強く決意表明した。

県の担当者による県民衛星の開発状況の報告や、福井高専生と福井新聞社の記者が風船を使った宇宙撮影を目指す活動「スペースバルーン」の説明もあった。

⇒「スペースバルーン」の活動はこちら

団員は今後、天体観測やペットボトルロケット作り、施設見学などの活動を通じ、宇宙や科学の魅力に触れる。

高度3万メートルの宇宙撮影挑む

4月1日正午。福井新聞の記者ら3人と福井高専の学生5人が、緊張した表情で福井市両橋屋町の三里浜海岸に集まっていた。カメラを取り付けた風船を打ち上げ、高度3万メートル付近から宇宙や地球を撮影する「スペースバルーン」の初めての飛行実験に臨むためだ。実験では風船に丈夫なひもを付けて係留しながら約50メートルの高さまで飛ばし、うまく空撮できるか確かめる。風船にヘリウムガスを入れ、さあ準備OK。3、2、1、ゴー。一斉に手を放す。すると風船は―。

スペースバルーンに挑戦しよう」。昨年12月、福井新聞本社の会議室。社内プロジェクト「ゆめ つくる ふくい」を翌年4月にスタートさせるのを前に、今後の活動内容を話し合う会議でメンバーの一人から提案があった。「面白そうだね」。賛同の声が相次ぎ、プロジェクトの一つとして取り組むことになった。

「ゆめ つくる ふくい」は、県や県内企業が2019年度に打ち上げを目指す「県民衛星」の機運を盛り上げ、県民の宇宙への関心を広げようと始めたプロジェクト。スペースバルーンに取り組むのは、経済部と社会部の中堅記者、インターネットに詳しいデジタルラボの若手社員の計3人だ。

福井高専の4年生5人も活動に興味を持ち、メンバーに加わってくれた。成功させるには専門家の助言も必要だろう。スペースバルーンの国内第一人者、岩谷圭介さん(31)=福島県郡山市=が計画に理解を示し協力してくれることになった。岩谷さんに進め方を相談し、本番は今年11月、沖縄県の宮古島で打ち上げを目指すことに決めた。

山崎直子さんインタビュー

「いつか宇宙に行けたらいいな」−。小学生の時に、星空を眺めながら漠然と抱いた宇宙への憧れが、夢の実現へのスタートだった。日本人2人目の女性宇宙飛行士として2010年4月に宇宙で任務を果たした山崎直子さん。「ゆめ つくる ふくい」プロジェクトのスペースキッズサポーター就任にあたり、15日間の宇宙滞在の様子や、子ども時代のことについて振り返ってもらった。

 −宇宙へ出発した時の様子を教えてください

2010年4月5日。宇宙服を着て、打ち上げ3時間前にスペースシャトル「ディスカバリー」に乗り込みました。エンジンに火が付くと、ドドドーッという揺れと、バリバリッという重低音が響き渡りました。ヘルメットとヘッドセットを付けているので、外からの音は遮られますが、頭がい骨を通じて振動を感じ、打ち上がったと分かりました。始めはゆっくりですが、だんだんスピードが上がり、最終的にマッハ25、秒速8キロになります。加速時にかかる重圧は約3G。自分と同じ体重の人が上に3人乗っているのと同じです。ほほが後ろに引っ張られ、腕も強い力でグーッと押さえつけられます。

打ち上げから8分30秒後、エンジンが止まります。急ブレーキをかけたように前につんのめりになりますが、体が浮いている感覚があります。シートベルトを外すとふわっと浮くんです。普段は下にたまっているほこりなども一斉に浮いて、日の光を浴びて光るので幻想的な雰囲気でした。すると「ウェルカム・トゥ・スペース(ようこそ宇宙へ)」という船長の声がコックピット内に響き渡りました。体中の細胞が喜んでいるような、何だか懐かしい感覚でした。宇宙は遠いところというよりも、むしろ「ふるさと」だと感じました。

 −宇宙から見た地球はどうでしたか? 

窓から初めて地球を見た時、ちょうど地球が真上に輝いていました。朝日を受けてキラキラと青く光り、雲はダイナミックに動き、地球自体が一つの生命体のような感じがしました。昼間は大自然の力強さがすごくきれいに際立ちます。夜になると真っ暗で地形は見えないんですが、電気の明かりがこうこうと輝いて、夜景の光がすごくきれいです。特に日本は明るくて、電気の明かりで日本列島が浮かび上がるんです。自然の力も強いですが、人の力もすごいな、強いなと思いました。

「ふーせん宇宙船」に挑戦するメンバー

【福井高専】

 ▽渡辺虎生太さん 福井高専機械工学科4年

 学生のリーダーを務める。「何でもできる」と周囲の信頼は厚い。手先が器用で、工作好き。エレキギターを趣味とし、バンドにも情熱を注ぐ。

 ▽山本雄太さん 福井高専電子情報工学科4年

 飲み込みが早く、周囲から頼りにされる存在。学生会の活動にも携わる。何かとちょっかいを出してくる小山田さんを軽くあしらっている。

小山田瑞季さん 福井高専電気電子工学科4年

 幅広い分野に関心を持ち、メンバーが行き詰まると鋭い指摘で導く。やんちゃな一面もあるが、根は素直。釣り、カメラ、読書などが趣味。

中野拓朗さん 福井高専電気電子工学科4年

 穏やかな性格で、よく笑う。あだ名は「てくろー」。漫画好きで、「進撃の巨人」の話題になると熱く語り出す。ファッションにこだわりを持つ。

廣野晴夏さん 福井高専機械工学科4年

 唯一の女性メンバー。柔軟な視点でアイデアを出す。普段は癒やし系としてみんなを和ませている。ロックバンド「モノブライト」が好き。

【福井新聞社】

吉川良治記者 福井新聞経済部

 チーム全体のリーダーを務める最年長者。唯一の文系出身で、理科や数学は苦手。県民衛星に触れ、「科学系のニュースを意識して見るようになった」。

嶋本祥之記者 福井新聞社会部

 普段は司法を担当。科学や気象への興味から、13年に気象予報士の資格を取得した。子ども向けの実験教室を開催し、科学の楽しさを広める活動にも励む。

橋本淳樹記者 福井新聞デジタルラボ

 ホームページ更新などの業務を担当。最先端の技術が大好き。タブレットPCが発売されると、購入して触りたくなる衝動を抑えられない。曲作りが趣味。